PCR検査のデータ分析

SARS-Cov-2 最終更新日:2022年8月15日

2022年8月15日、デンマーク国立血清研究所が行った、今年6月までに国内で行われた6000万件以上のPCR検査データを分析したワクチン未接種の集団の免疫についての分析結果が、英医学誌ランセット・リージョナル・ヘルス‐ヨーロッパ「The Lancet Regional Health – Europe」に掲載された。

コロナウイルスに感染した後、ワクチン未接種の集団ではどの程度の免疫が得られるのか?デンマーク国立血清研究所(SSI)の研究者たちは、デンマークのPCR検査データを分析し、この疑問について調査した。PCR検査は、何度も感染する可能性がどれくらいあるか、つまり、以前の感染が新しい感染に対してどれくらい予防になるかを調べるためにも使うことができた。(デンマークにおけるPCR検査は、コロナパスなどと併用して、社会活動の制限と高齢者や弱者を守るためにも推奨され、人口当たり世界一多い件数となった)

以下、デンマーク国立血清研究所が国民に向けて発表したニュース内容の要約

結論から言うと、covid-19に過去に感染していると、同じ変異体による再感染に対して良好な予防が得られ、同じウイルス変種への再感染の発症予防率は83%で、ワクチンを接種した場合と同じであり、重症化を防ぐにも有効であった。

デンマークでは、ファイーザー社製とモデルナ社製のmRNAワクチンが使われた(2020年当初フロントライナーがアストラゼネカ社製及びジョンソンエンドジョンソン社製を接種したが、後に上記が推奨された)

初期バリアントに対する高い予防機能

主にオリジナルの武漢ウイルスとαアルファ変種に感染した2021年夏の初めまで、過去に感染したことがある人の新規感染に対する防御率は83.4%であった。しかし、65歳以上の高齢者では、70.2%と低い。感染時の症状の有無によって、プロテクションが異なる。症状が無いほうが予防率は悪く、症状があった人だけを対象にデータを分析すると88.3%の発症予防率があった。

  • αアルファ 英国2020年9月
  • βベータ 南アフリカ2020年5月
  • γガンマ ブラジル2020年11月
  • δデルタ インド2020年10月
  • οオミクロン 複数国 2021年11月

「デンマークで行われた多くの検査に基づいて、流行の初期にコロナに感染した後の自然免疫は平均約83%で、ワクチン接種後の集団に見られる予防効果とほぼ同等であると計算できた」と、主任研究員のSteen Etheæbergは言う。

デルタ時の予防効果

δデルタ変種がデンマークで流行した2021年秋と、οオミクロンが引き継いだ今年初めの様子も調査した。以前の感染でもδ型感染に対する予防効果があり、感染の間隔が長くなると、予防効果は徐々に低下することがわかった。しかし、これらの結果は、ワクチンを受けていない人たちだけを対象にした分析であり、ワクチン接種が進んだデンマークではこのグループは次第に小さくなっていったため、少し不確かなものとなる。

逆に、οオミクロンが確認された時期には、過去の感染症からの予防効果が極端に低下した。再感染の間隔が短期間であれば予防率は51%だが、初感染が1年以上前であると予防率は19%にとどまった。しかし、オミクロン感染後でも重篤な病気に対しては十分な効果があった。。

“新しいウイルス変種では感染に対する予防効果が低く、特にοオミクロンは比較的自由に人の間を行き来し感染させることができ、すでに「古い」ウイルス変種のいずれかに感染している人にも感染する可能性があることが分かった。幸いなことに、以前の感染が新たな感染に対してそれほど予防できなかったとしても、重症化に対しては十分な効果が確認された」とSteen Ethelbergは言う。