デザイン家具 見本市 未来は今 その1

2021年8月25日

コペンハーゲンでデザイン家具の見本市が開催されたことは、暗雲たれ込める日々の、一息の休憩にもなりました。マスクもせずに開催していることに異論もあることと思いますが、それは別に記すことにして、ここではデザイン家具の話をしようと思います。

テーマは流行と伝統、そして緑を次世代へ(持続可能)でした。デンマークの家具、取り分け椅子は世界でも有名です。皆さんがもし、一生使えて次世代にも残せる椅子を購入するとしたら、どんな椅子を選びますか?

どんなに高価で有名でも、自分の好みとは違うデザインは選べませんね。流行りのものはどうですか?ずっと使うことができますか?洋服も流行りのものだと数年後には遅れ(笑)を感じませんか?あまりにスタンダードだと、つまらない・・・かも知れませんね。好みはさまざまですし、地球に優しいなどと縛りができたら、尚のこと難しくなりますね。

デンマークでは、50年代に世に出たデザインが70年経った今でも市場のトップにおり、追い抜くものは登場することがまれで、何かの賞をとってもなかなか長続きしない、とても競争の激しいマーケットです。クラッシクデザインの右にでるものは無いと言っても過言ではないでしょう。それ程の人気です。でもメーカーは、デンマーククラッシク家具のライセンスを持っているからと言って旧態依然であぐらをかける時代ではなくなりました。環境問題が大問題の現在、消費者にも受け入れられる商品を、また社会が認める商品を出さなくてはならないし、工房もデザイナーもそのような商品で、世界をリードし差をつけることによって付加価値をつけ、これまでの良いイメージをもっと向上させていきたい思っています。そしてこれは国の戦略でもあります。

デンマークのクラッシックデザイン家具を支えているのは、木材の性質です。 強度があって硬い、オーク、マホガニー、チーク、 ウォールナット、 桜などが使われてきました。大事に使えば一生使えます。次の世代へも、その次へも残すことができます。
今回の見本市でも、木材を使った家具が再認識されているのだな、と感じました。無垢の木材を使った家具の展示が圧倒的でした。 ならばそれで良いではないか、、となりますが。

木材が持つ自然の色はきれいですよね。一番手前はアフリカ、コンゴで生育する硬い木です。磨くだけでこんな深い色が出ます。

木材には様々な色がありますが、意外と忘れがちなのは、同じ木材でも色や明るさが木目によって違うことです。床材などは若干違ったほうが、自然の木材だということもわかるし厚みも感じられて温かみもありますし、幅広なら一層高級感もでます。ですが居間に一脚だけ置かれた椅子は、例えば脚と背板、背もたれ部分など、全体が同じような色合いでないと、自然とそこへ意識が行ってしまいます。ダイニングチェアーも四脚なら四脚全体の色合いが揃っていないと、そこへまた目がいきますね。シンプルなラインのクラッシック家具は、人のそのような感覚を前提に、自然な木目の美しさを損なわずに組み立てられています。色合わせをしていくと、合わない色合いの木材が残ります。量産するデザイン家具は、一脚ごとにその課題に向き合っています。長い年月をかけて育った樹木を、更に無駄にせず、本来のデザインを損なわずに商品化するには、クラッシクから少し離れることも必要です。

社会のニーズもあって、最近はカラフルなデザイン家具が商品化されてきています。自然の木に色付けするのは、もったいない気もしますが、色合いが大きく違ってもデザインが損なわれてしまうし、無垢でないほうが用途によっては個人の好みにあうこともあるし、表面を保護する役目もあるという良い点も忘れてはいけないですね。ということで、伝統的なデンマークデザインでも様々な色のが家具が、昨今多く商品化されています。

色付けは、地球にやさしいことが求められます。なんでも色があれば良いというわけでなく、ここにもデンマークの環境問題に対するこだわりが垣間見えます。先へ先へ、未来は今、に責任があるという考え方です。

デンマークを代表する家具工房、PP Møbler(PP家具)社は、例えば50年かけて育った樹を伐採して造った家具は50年以上使えるように、そういった品質の良いものを作り続けていきたい、と言っています。次の50年、のんびりゆっくり樹が育つまで、家具を造るために森が無くならないように。これが、持続可能な社会への取り組みの分かりやすい一例です。

また、環境に優しい家具工房であり続けるためにも、ラッカーは水性がメインで、油性は植物のオイルを使用するなど、環境に配慮しているようです。

PP Møblerが Hans J. Wegner(ウェグナー)デザインのライセンスを数多く所有していますが、生産しているうちのひとつに、ザ・チェアーがあります。ケネディとニクソンのテレビ討論に使われた椅子がそれですが、数年前にオバマ元大統領も座られたことがあるので、耳にされた方も多いでしょう。

Hans J. Wegner は「椅子は座るためのもの」であって飾るものではない、と常々言っていました。ですので重要な対談にも座り心地が良く、シンプルで何も主張しない、対談の邪魔をしないこの椅子が選ばれたのも当然なのでしょうか。そして、これぞ椅子、とアメリカで評判になり、The Chairと呼ばれるようになりました。

家具職人としての技術も知識も持ち合わせていた Hans J. Wegner が1949年に完成させ発表されたときは、丸い椅子という名前がでした。

この椅子を製作するのにも、木材の色目はとても重要です。脚とアームレストの接合もすんなりはまっていますね。木目の位置も、背板を見ていただくと分かります。このようにして高価な木材の色目を合わせていくと、合わない色が出てくるのは前述しましたが、お判りいただけますか?さて、どうするか。

結論は、ザ・チェアーに色を付ける。ブラックが今回初めてお披露目されました。地球に優しい工法で、斬新な椅子が出来上がりました。どっしりした感じもありますが、本来の無駄のないラインにもよく似合っています。座面の編み込みも引き立ちます。ブラックと言っても、材質によって肉眼でも違いが分かるほど、色味は変わります。このブラックはきれいですね。マットな仕上がりでした。来場者にも好評だと言っていました。昨今のヨーロッパでは、服地にもブラックの人気が高いです。環境問題だけでなく、ブラックは色そのもののニーズがあります。

四脚写っていますが、中央のファブリックの座面。一番手前と後ろの二脚に引けを取らない、まるで前からあったようにも見えませんか?

ザ・チェアー 四脚

PP58  Hans J. Wegner デザインのダイニングチェアです。これもブラックがよく似合いますね。そして、ファブリックの座面。 60年代の匂いがしますが、クラッシクと合わせるとモダンになりますね。さて、このファブリックのデザイナーはどなたでしょうね。。なんとなく可愛らしいデザイン、デンマーク人ではない気がします(笑)

ブラックのダイニングテーブルに、ダイニングチェアー。

Hans J. Wegner の椅子と言えばこの、チャイナチェアー。これもブラックを出すのか、、展示が無いということは、相続人がオリジナルの変更を承諾していないのかも知れません。と、容易に想像できるほどチャイナチェアーはデンマーク人にも愛着があります。そのうち分るでしょう。

チャイナチェアー

最後に、人。

仕事中でも呑んで休憩です。
デンマークのデザイナーさんやバイヤーさん、メーカーさん、みんな楽しそうでした。

ジン&トニックの列(笑)
外でコロナパスを確認する、アルバイトの高校生。

分別ごみ

2021年2月22日

一般戸建て家屋の分別ごみにコンテナが配布されている。その数なんと4個。

普通のゴミと生ごみでコンテナ1個。中は仕切りがあって、回収車は一台しか来ないが自動でコンテナを持ち上げて、それぞれに回収されている。

段ボールで1個。プラスチックとメタルで1個。ガラスと紙で1個。そして、、さらに布地と牛乳などの紙パックも別に回収を始める予定だと、市のお知らせ。。

ジュースの紙パックは、牛乳のパックと違って太陽光を遮るように極薄のメタルが紙にサンドイッチされているから、、これはどうするのか素朴な疑問。

昨今増えた再生布でできた、バスマットなども思いつく。

一軒単位での生ごみ回収目標は年間155㎏だそうだが、そんなに捨てるものなのか。