2023年5月4日、コペンハーゲン市議会において、2030年までに首都からガソリン車やディーゼル車などの化石燃料自動車をなくすよう取り組むことが合意された。
実現には様々な課題がある。
7年以内に充電スタンドを整備することが可能か否か、近隣市との関係や社会的なバランスが取れるか否か、更には国会からの支援も必要だ。
2021年時点では、自治体が内燃機関を持たない車しか走れない「ゼロ・エミッション・ゾーン」を導入することが可能と合意されているが、法整備には至っていない。まずは一部エリアのみのゾーン形式から始めるのではなく、コペンハーゲン市は一気に市全体へと計画するのか、乗用車の販売にも更に大きな影響が出ると思われる。
というのも既にEVの需要は高く、車庫を持たないアパート住民もEVを購入する人が増え、ディーゼル車では肩身が狭い、と嘆く人も出てきている。また、若者の多くは、いずれガソリン車は消える、と予測している。
確かに、ガソリン車が少ない街の空気はとてもきれいだし、騒音もない。イケてるコペンハーゲンが世界初のEVの街になるのか、どうか。
市内を抜ける、アンデルセン通り。自転車も多い。
ゼロ・エミッションは、大気汚染物質を排出しないことを指し、具体的には二酸化炭素や窒素酸化物、粒子状物質を一切出さないことで、地球温暖化の原因の一つであると知られている、その解決策の一つである。
実現には、再生可能エネルギーの利用、省エネの推進、クリーンテクノロジーの開発などの取り組みが不可欠とされる。
デンマークは今では風力発電のパイオニアとして世界にその名前が知られているが、90年代でも風力発電は非現実的だと言っていた科学者も知識人も多かったのだ。しかし、それが現実となった今、デンマークの首都コペンハーゲンは、もしかすると2030年からガソリン車は消えるのかも知れない。
コペンハーゲン市のEV優遇の現状*2023年5月時点
- EV、Eバイク及び水素車は、全ての市営地上パーキングを無料で利用できる。PHVプラグ・イン・ハイブリッドはこれに当てはまらない。
- 市の居住者用パーキングスペースを利用する場合の料金は、ガソリン車は燃費別に年間約2万6千円から11万円。EV及び水素車は一律約4千3百円。
*該当する車であるか否かは、諸管轄がナンバープレートデータベースで識別可能となっているので、違反には車の所有者に罰金が科せられる。これはその他の違反も同じである。
国のEV優遇*2023年5月時点
- ガソリン車の取得税は、最大150%であるが、2020年までのEVはこれが0%であった。以降のEV及びPHVは価格に応じた段階的な課税制度で現在は最大40%となっている。ガソリン車と比較するとかなりの低率と言えるが、2025年以降は現在よりも低い税率が適用される予定。
- 年間税は、ガソリン車の約3分の1程度に抑えられている。
EVが増えない最大の理由
ガソリン車との価格差である。デンマークの自動車税は高く消費税も25%と高いため、ガソリン車も同レベルの日本の市場価格と比較すると倍近い。EVは同程度の仕様でもガソリン車より200万円ぐらい高くなってしまう。
しかし、ガソリンの高騰などの物価高に比較し安価な深夜電力などを考慮すると、EVのほうが長期的には安くなる、と国内最大の自動車所有者のための組織であるFDM(United Danish Motorists)は言う。
価格差以外に、充電インフラや充電時間、航続距離に対する不安や、EVに対する認知度がまだまだ不足していることもその要因として挙げられる。
あとがき
EVの認知度で、デンマークと同じくEVの認知度が高い国は筆頭にノルウェー、そしてスウェーデン、オランダ、ドイツと北ヨーロッパ。テスラのUSAは挙げるまでもないか。