EV その1

2030年には100万台のEV(電気自動車)が街に溢れることを目標に掲げているデンマークでは様々な問題に直面している。

現在、一般乗用車※1でガソリン車のナンバー取得税は車輌価格の150%前後。数年前までは全ての乗用車に180%が課せられていた。当然これに付加価値税(消費税)25%が上乗せされている。

EVのナンバー取得税は、2016年の20%から100%に増加したが、車輌価格に対する控除があり、その一例に400,000クローナ(2020年9月での日本円換算約650万円)未満であればゼロパーセントで、付加価値税の25%だけとなる。バッテリーの製造問題とCOVID-19の影響でEVの生産に支障が生じていたが、それらも解消されつつあってか、続々と各メーカーから発売が予定されている。

テスラが発売された2015年のナンバー取得税は、当時の政権が政策として環境問題を前面に押し出したことで免除されたが、2016年にはこれが20%になると発表され、駆け込み取得で2015年は4310台。この数字を追い越した2019年のEV売り上げ台数は5524台で、2018年の4倍に増加。環境問題と政治に大きな関心を持つ国民にとって、ガソリン車かEVのどちらにするかは悩みどころである。

環境問題を優先すれば税収が激減する。高福祉を維持する為の財源をどうするのか。現政権は労働組合を母体とし、高所得者と企業への増税を掲げて票を獲得してきているが、労働者も車好きなのである。また現政権は中道左派の社会民主主義であるが、更に左派の党との連立で政権を維持している背景がある。更に左派とは、、社会主義、環境主義、共産党から分かれた社会主義などが混在する。悩ましい判断を迫られている。

ガソリン車同様の税金をかけると、EVはガソリン車よりまだ高価なため振興の妨げになる。2021年からの乗用車のナンバー取得税をどうするか、大きな議論が始まった。性能の良い小型車が発売されることも手伝って、駆け込み取得が増えるであろう。

EVは環境問題にどう影響するのか?CO2排出規制で社会は大きな損害を受けるのではないか? インフラはどうするのか、アパート住まいのEV所有者の充電スタンド設置など、税問題意外にも課題は多い。

デンマークの取り組みが世界の参考になれば、と思う。 2020年9月8日

※1 乗用車、商用車、乗用商用車、、複雑なカテゴリー別の税システムが存在する。