出口戦略と入口戦略

2021年9月22日

デンマークはでは2021年3月に政府と与野党での議論が行われ、全会一致で国内のエピデミックからどう脱却するか、特別法が制定された。

大きく以下8項目あるが、項目ごとに細分化された基準は80項目にも及び、段階的解除の目標日程とともに公表され、出口戦略として使われた。

  • ワクチン接種とブースター接種
  • 治療と医療体制
  • 感染状況の把握
  • 感染予防対策
  • 検査と隔離、及び追跡
  • 国境の動向
  • 人流抑制の動向
  • 市民の交流動向と感情(安心度や満足感)

これらを常時管理監視しながら遂行し、予定通り2021年9月12日には、全面解除となった。現在9月後半に、世界のあちらこちらでワクチンパスポートや陰性証明の利用について議論されているが、デンマークでは5月に導入され、大きな混乱もなく公共施設、飲食店、教育機関などで約4か月利用された。それも解除になり、自由な社会に戻ったところである。

ワクチン接種は強制ではないが、2021年9月20日時点で、対象の12歳以上の約84%が終了しており、1回目は86%が終了している。一回目と2回目のインターバルは6週間だが、徐々に1回目と2回目の接種率が近づいている。つまり、最後のグループが鈍化している。国全体としての目標は83%で、現在76%。まだ上昇しているので、80%に届くかも知れない。また、社会活動をしている人の9割がたが接種を受けており、感染率も大幅に下がったことは、ワクチン接種が大きな理由の一つであることは間違いないと思われる。

最後のグループの接種が鈍化している理由は様々あるが、基礎疾患のある人、医療従事者、高齢者施設の居住者と職員、そして年齢順に接種が進んだので、打ち遅れた中高年は、今接種に行くと若者だらけなので違和感があるだろう。なんで今一回目なんだ、と聞かれるかもしれない等などと考えてしまう人もいる、と想像できる。自分は大丈夫だろうという考えの人も少数だがいる。ワクチン接種を受けないと公言した人が撤回しづらい、というのもあるだろう。ブースターショットが始まっているので尚更だ。

追記、国別のワクチン接種率は各国比較し参考になるが、12歳以下の多い国と少ない国の接種率を同時に比較して、もし安堵しているのであれば注意が必要だろう。各国、目標値を、恐れずに名言すべきと思う。

ワクチン接種の義務化の議論

ブースター接種が始まっている。重度の免疫低下がある人や、一回目を受けて9か月を迎えるナーシングホームに入居する高齢者とその職員、そして医療従事者である。冬に備えた入口戦略が始まった。

個人の自由が認められているデンマークでも、職場によっては義務化すべきではないか、と考える人が多いのが現実だ。職場内で、ワクチンを受けずに重症化しいまだ後遺症に苦しみ、職場復帰できない人がいるという実例をみたり聞いたりしていると、うたない判断をする人が理解できない、と思うのは当然だろうし、先延ばしにしていた人もワクチンをうっておこうか、となるのは自然な反応で、ある程度までは接種が進んだ理由であろう。

市民は政府の説明におよそ納得し、今では見ることもないマスクだが、一時期は公共交通機関や店舗利用に導入されたマスクの義務化にも従った。ワクチン接種も同様、政府や専門家の説明に納得し、多くが拒否反応を示さず順番に従った。中高年は感染して重症化したくないと考える人が多く、若者は重症化することの危機感より、家族や周囲の人に感染させたくないし、週2回の陰性証明を得るのはもう面倒だ、というのが大方の反応であったように、あちこちでのインタビューでそのような印象を受けた。

ここへ来て、ナーシングホームの職員がワクチンを受けておらず感染し、そのまま職場に出勤し高齢の居住者にうつし死亡者が出たことが、追跡調査で判明した。ワクチン非接種者への風当たりが強くなった。非接種ならば自粛生活を続けて欲しい、と居住者の家族が考えるのは当然と言える。ホームの住人は身体介護を必要としている人がほとんどだからである。

高齢者ホームや自宅で訪問介護を受ける高齢者の重症化や死亡者数が抑えられている現実からも、ワクチン接種をしていれば、感染させるリスクも低いことが判明している。ワクチンを接種するとリスクが高まるというような意見も散見されるが、超過死亡数と比較しても、それは当てはまらない、との見解がデンマークでは主流である。

この感染症が拡がった時点での対策への国民の共通認識は、死亡や重症化のリスクの高い人を守ることであったので、それと相反する行動は非難されても仕方のない面がある。

休業補償もあり、ワクチン接種も無料で機会は公平に与えられ、検査はいつでもどこでも無料で受けることが可能で、万が一感染しても病院が無料で面倒見てくれる社会でできることは現時点ではここまでしかないのであろう。命優先で現在国ができること、市民が納得することは、ここまで。職場によっては義務化、というのも致し方ないのであろう。

インフルエンザが大流行するとの予測も出ているため、インフルエンザワクチンも推奨されている。人々の交流が鈍化し、インフルエンザも流行らず、風邪にも罹らない状況が一年半以上続いたので、人々の免疫も落ちているとの見方だ。

そしてなによりも政府と専門家が「また波が来る」と警告しているので、既存のワクチンが有効でない変異したウイルス発生したら、また暫くワクチン供給を待たねばならない。国内での感染拡大を避けるために、次はなにができるのか。。